今回は『1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE』(ヒトデ/著 徳間書店)をご紹介します。
この本は、いわゆるFIREと言われるものの根底を覆す良書だと思います。
- なんとなくFIREに憧れている
- 株を買うなど具体的に取り組んでいるからいつかはFIREできると思っている
- 今の生活を早く抜け出してFIREしたい!
こう思っている方におすすめします。
あらすじ
仕事が嫌で毎日辞めたいと思っている主人公智也が、人間の言葉が話せる自称1万回生きたネコの小鉄と出会うところから始まります。
智也はFIREを目指してインデックス投資に取り組んでいることを話しますが、小鉄からは「それではFIREできない」とダメ出しをされてしまいます。
小鉄が過去に関わってきたニンゲン達の様子を見聞きするうちに、智也の考え方や行動に少しずつ変化が現れます。
しかし、ついには子鉄から、FIREの根底を覆す衝撃的な事実を聞かされます。
FIRE指南書ではない
先にお伝えしておくと、FIRE指南書ではありません。
形式もビジネス書ではなく、FIREを題材にした小説です。
「こうすればFIREできる!」という方法が書かれた本が読みたい方は、書店のFIREコーナーへどうぞ。
一言で言うなら「FIREしたあとの自分について考えられる本」です。
それがわかれば、自ずと今の行動も変わってくるはず。
FIREを本気でしたいと考えている方は、この本を読んで、「FIREして自分はどうしたいのか?」を考える必要があると思います。
なぜならこの本の大きなテーマは「そもそもFIREをしても幸せにはなれない」という衝撃的な事実だからです。
FIREしても幸せにはなれない?!
実を言うと私自身、昨今のFIREブームに対して少々疑問を持っていました。
- みんなそんなにFIREしたいの?
- そんなに仕事辞めたいの?
- FIREしてその後どうするの?
私はすでに50を過ぎていて、今からアーリーリタイアを目指すにはちょっと遅いから、というのもあると思います。だとしても一刻も早く仕事を辞めてリタイアしたいとはちっとも思えなかったのです。
今、好きな仕事に就けているからということもありますが、できれば生涯なにかしらの仕事をしていたい、と考えています。
それは出産、子育て期の閉塞感、孤独感が関係しています。
社会と繋がっていない状態は地獄
私は30のときに最初の子どもを産み、約10年間社会とほぼ断絶した状態でした。
誰とも話さずただただ3人の子どもの世話をする毎日は、精神的に私を追い詰めていきました。
一番ひどい頃は、朝目覚めた瞬間に「また長い一日が始まる」と絶望的な気分になっていました。
家に軟禁されているようで、外に出たくて、でも出られなくて、必死にもがいていました。
今思えば、いわゆる「産後うつ」だったのだと思います。
小鉄が「仕事を一切しないと、自分の存在意義を見失ってしまう方が多い」と言っていましたが、本当にそうだと感じます。
社会と繋がっていないあの頃の状態は、私にとって地獄でした。
私にとっては「社会と関わり認められる」ということが大切だったのです。
FIREをしても結局みんな仕事をする、という事実
小鉄は「今まで見てきたFIREを達成した人たちも、結局はみんな仕事をする」といいます。
だとしたらFIREってする意味がある?という根本的な疑問に智也はぶち当たります。
ここで考えた方がいいのは、FIREできたら自分は何をしたいのか、っていうこと。
そして、FIREそのものを目指すのではなく、今からFIRE後にやりたいことに向かって取り組むこと。
ずっとFIREに対して釈然としない思いがありましたが、この本を読んで腑に落ちました。
この根本的なことを理解しない限り、FIREを目指すと言ってもただの絵に描いた餅なのです。
少なくとも「RE」=「リタイヤアーリー」は、私にとって必要ないんだなというのが、改めて理解できました。
実際にFIREをした筆者だからこその圧倒的な説得力
著者のヒトデさんは、2020年29歳の若さでFIREを達成されています。
さらに、コーチングを学び、実際にFIREされている方々との関わりの中で、いろいろな事例を見てきています。
これらの経験が、この本の圧倒的な説得力に繋がっています。
FIREを達成して誰もが通る虚無感と向き合い、もがいてきたからこそ、FIRE後の様々な状態を書くことができるのでしょう。自由に生きたいと願うなら、今この本を読んで「FIRE後の自分」をリアルに想像する必要があると思います。
実際私は、この先の自分の生き方について考え、それに向けて少しずつでも取り組んでいこう!と気持ちを新たにできました。
幸せなFIREは人によって違う
働かなくても自由に暮らせるなんてFIREっていいな、うらやましいな、っていう気持ちは誰にでもあると思います。
けれど「FIREすること」を目的にしてしまうと、ゴールして終わりになってしまいます。人生はFIRE後もずっと続いていくというのに。
タイトルにもあるように、「幸せなFIRE」はひとりひとり違うのではないでしょうか。
自分にとっての本質的な自由とは何か、この本を読んで考えてみませんか?
【余談】不覚にも泣いてしまった
余談ですが…
物語の最後、私は不覚にも泣いてしまいました。スタバで読んでいたというのに…。
これは著者のヒトデさんと飼い猫の茶太郎くんを投影して読んでいたというのもあります。
2人(1人と1匹)が幸せでいてくれたら、それだけで嬉しいんやで〜という気持ちでいっぱいです。
そしてこれも余談ですが、読み終わったスタバの帰りにスーパーでいりこを買いました。
久々に食べたけど、美味しかったです。
みなさんもぜひ買ってみてください。